ツイスト・ニードル2025年02月01日

ツイスト・リグのニードル化

ツイスト・リグの先端部品をニードルにかえてニードル・リグにします。ナナメ切り部品同士が角パイプのなかでツイストし、固定が強化されます。ニードル部品にはスリットがはいっており、角パイプの一端がはまります。

磨いたらアカン【黄銅球】2025年02月02日


黄銅関節。パペットに埋め込まれてるものはいいのですが、リグに使ってるものは裸なので分解が容易です。人によっては、メンテナンスのつもりで黄銅球を磨く方がいるらしい。これ、ダメです!

使い込まれた関節の黄銅球の表面には、材料内部から剥離した鉛が滞留して、動作の潤滑油になっています。これをとったら動きに滑らかさがなくなります。動きが間歇的になり、ボール表面が傷つきやすくなります。傷つけば動作障害がおきます。

万一磨いてしまったら。一番いいのは半年ぐらい放置して、表面が自然に暗化して鉛が剥離してくるのを待つことです。

…なんてことはできないでしょうから次善の策をとります。強アルカリで強制暗化させます。次亜塩素酸ナトリウム=キッチンハイターです。取り扱い注意。触ると皮膚がボロボロになります。なお次亜塩素酸ナトリウムは手指の殺菌に使う次亜塩素水とは別物です。ご注意。
キッチンハイターの原液に30分以上つけるといい具合に暗化します。ステンレスや鉄のねじははずしておくこと。さびます。
処理後は水洗・乾燥させてからソケットプレートに挟んで動かします。動かしているうちに暗化した部分が崩壊して鉛成分がなじんでいきます。(フィッティング)

差したらアカン【関節全般】2025年02月03日


関節に潤滑油を差すのは、もともとおススメしてません。
パペット内蔵関節だと

 ・ガワの材質に悪影響することがある
 ・油が切れると動きが変わる。パペット内部だから差しなおせない

ってこともあります。関節が外部に露出してるリグ用だと

 ・油が、あるいは油に着いた汚れがアニメーターの手について、パペットを汚す

ことがあります。

一般に良い潤滑油とされるものも、関節用としては逆効果のものもあります。一番ダメなのはシリコーン系(シリコーンオイルや、シリコーンスプレー)です。マジで動きが不連続になります。

とくに最悪なのが、ボールにステンレス球を使った関節です。最近のパペットはガワにシリコーンゴムが使われているものがあり、これが関節に直に触れると、シリコーン成分で動作障害を起こします。だから人形師は関節側にテーピングして両者の直接接触を避けるのです。

シリコーンのパペットを触った手でリグ関節をいじると、シリコーン成分が移ってリグ関節の動きが阻害されます。

ついてしまったシリコーンを除去するには シリコンオフ を使います。シリコンオフをシャバシャバにするほど吹いたら、エアーで飛ばすなりボロ布で拭くなりします。
灯油にも同じ効果があります。私はこちらを使ってます。

磨かなアカン【ステン球】 その12025年02月04日


ボールがステン球(※)の関節は、黄銅球のように潤滑油の鉛が湧き出てきません。とくにリグ用は手の油や汗で汚れやすいのか、錆(酸化)で動きが阻害されることがあります。こんなときは磨きが有効です。
ただしシャフトが電動ドリルドライバーにくわえられて、ボールが軸回転できることが条件です。

(1)電ドラにつけたボール&シャフトを回しながら、3x3センチの大きさに切った耐水ペーパー(#800~#1000くらい)でボールを磨きます。水はつけなくて大丈夫です。

(2)ボロ布にコンパウンドをしみ込ませて、回転するボールに押し付けながら磨きます。これを3回以上くりかえします。

(3)ボールに灯油につけて、ぼろ布に押し付けながら回転させ、コンパウンドを除きます。

(4)部品を電ドラからはずして、もう一度灯油につけてからぼろ布で拭きます。ボールの端のへこみにコンパウンドが残っていたら、灯油と一緒にエーアで吹き飛ばし、残りを綿棒でとります。

複雑な構造に組み込まれたボールを再研磨するにはそれ用の治具がいります。専門家(って誰や)に相談してください。


※私の言うステン球はSUS440C球です。鋼球も振る舞いは同様と思われます。ステン球のSUS304球は、他金属のソケットプレートとの相性が元より悪く、私は使いません。

つづく

【トップイメージ解説】2025年02月06日

トップイメージ

本家サイト http://www.modelanimation.com/ トップイメージ解説

ツイスト・ニードルの別バージョンです。部品同士を、それぞれのナナメ切り部分を近づけることで固定します。周りを包んでツイストさせる角パイプのサヤがありませんから「ツイスト」リグではなくなります。
ツイスト・リグであれば、ねじの締め付けは八分目ですみます。これはねじだけで止めるので100%の力で締めないといけません。

磨かなアカン【ステン球】 その22025年02月07日

襟首を磨く

ステン球の襟首の部分(正確には、シャフトとボールが接した線からボール側)が錆びたとき。この部分ははソケットプレートのボールシート(ボールの受け穴)に触れないから、動きに影響しません。ただ、放置しておくと錆が広がることもありますし、見てくれも悪いです。除去しておくに越したことはありません。

(1)布ペーパー(#400くらい、シャフトの太さにより調整)を3ミリ~4ミリ幅でタテ裂きします。 

(2よじってひも状にします。

(3)シャフトをベンチバイスに横固定し、ひも状布ペーパーで襟首を磨きます。シャフトを180度回転させて固定しなおし、襟首全周の汚れをとります。

要は、ねじったタオルで首の後ろを洗う的な?

ひも状布ペーパーがボール表面にふれてしまったら、動きが悪くなることがあります。そのときは、その1の耐水ペーパー磨きからやり直しです。

つづく

磨かなアカン【ステン球】 その32025年02月08日


ステン球と黄銅丸棒の接合に半田をつかうことは滅多にありません。ステンと黄銅の半田づけはできることになってますが、関節用としては強度が弱いです。とくに肩関節や股関節など、ねじりの力がかかるところには不向きです。通常は、より強度のある銀ロウをつかいます。

ただ銀ロウづけは半田づけにくらべ面倒です。体感としては作業量は3倍程度? そこで普通はステン球+黄銅丸棒のみをロウづけし、他には半田づけを使うということをします。

たとえば、ボールをロウづけして磨きも終えたボール&シャフトの、黄銅シャフト側をほかの黄銅部品と半田づけするとします。
このとき、半田づけにあまり時間をかけてはいけません。必要最小限の時間であげます。なぜなら、長時間加熱すると関節の動きが変わる(悪くなる)からです。原因はおそらく、黄銅シャフト経由で伝わった熱がステン球表面を酸化させるためです。
(当初はガストーチからでた成分が何か悪さをするのかと思ったのですが、ステン球をアルミホイルで覆って半田づけしても同じことが起きました。消去法で、私は熱酸化説をとります)
半田づけ後に動きが悪くなったら、(形状が許せば)ステン球を再研磨します。

手早くやれば動きは変わりません。これはトランジスタなどの熱に弱い電子部品の半田づけに似ています。

つづく

磨かなアカン【ステン球】 その42025年02月10日


その3のシャフト側の半田づけで、シャフトの長さがある程度あれば、水ヒモで熱伝導をおさえることができます。ヒモはある程度太いもの。ナイロン系は溶ける危険性があるので駄目です。私はよくタコ糸を使います。
ステン球の近くにヒモをぐるぐるに巻きつけ、水をしみこませ水ヒモにします。半田づけ時にシャフトのほうから伝わってきた熱はここでせきとめられます。表面酸化させるするほどの熱はステン球に伝わりません。
半田づけ直後の動作チェックが不要になり、制作時間を短縮できます。

※再研磨せずに済むわけで、タイトルに偽りありになります。

半田づけは溶接ではない2025年02月12日

半田でロウ接

「そこは半田で溶接ね」

なんてことをいう方がいらっしゃいます。プロ・アマを問わず、割と多く。
半田づけは溶接ではありません! ロウ接です。

溶接(ようせつ)もロウ接(ろうせつ)も2つの金属部材を結合させる方法です。

(1) 溶接: 両部材の一部を溶かして、混じりあわせて結合させる
(2)ロウ接: ロウ=両部材より低融点の金属 を溶かして、それを接合成分として結合させる

(1)では部材が溶けますが、(2)では溶けません。

銀ロウづけも半田づけも、(2)ロウ接です。けっして(1)溶接ではありません。
銀ロウづけにおけるロウは銀ロウ。半田づけにおけるロウは半田となります。

 ✕ そこは半田で溶接ね
 〇 そこは半田でロウ接ね
 〇 そこは半田で半田づけね

 ✕ そこは銀ロウで溶接ね
 〇 そこは銀ロウでロウ接ね
 〇 そこは銀ロウでロウづけね

逆ピン治具 その12025年02月13日

逆ピン治具

前回「半田でロウ接」の例としてあげた写真は、 クレ人 のアーマチュア制作記事で使ったものです。

2つの部材をおさえているのは逆ピンセットです。ピンセットの先端の一方に、アルミワイヤーでパイプをくりつけてます。パイプの曲面により、部材間のスキマが消えます。これも治具の一種です。

つづく