あけましておめでとうございます。2017年01月01日


本年もよろしくお願い申し上げます。


今年の干支の元ネタも、 去年 に続き諸星大二郎作品です。
ハーピーは「アダムの肋骨」にでてくる妖鳥――といいますか、異星生物です。
べつにハルピュイアという、海洋堂のガチャポンにもなった奴もいますが(作品名『鳥をみた』)、マニアは二番煎じはやらないのです(!)。

腹には明確に目玉と顎の関節があります。だってこれがないと、ただの鳥のアーマチュアにみえてしまうので・・・。

原作では、腹の顔は当初は羽の模様にみえている――という設定になっています。模様は見る者によって、各人が過去に見覚えた女、それも別れた恋人や妻など、当人にとり印象深いの女の顔にみえます。終盤でそれが実は・・・ということになっていきます。

模様なのか、実物なのか? というのは、原作で成功したように、漫画ではあいまいに描いておけます。しかしストップモーション用モデルという立体物になると、模様は模様、実物は実物にしかみえません。実写映画化したとして、中盤まで模様であったものが、クライマックスでいきなり実物になったら、観客は一体何が起こったのかわからなくなるでしょう。

解決策を提案します。

ハーピーが人間たちにある種の精神作用を及ぼす、とうのは作中で言及されています。これを拡大解釈し

「ハーピーは強力な精神作用によって、自分の顔を羽の模様だと思わせる」

としたらどうでしょう。

なんのために? それは、自分を脅威ある生物にみせないためです。ある種の擬態といえます。
この擬態は手が込んでいて、精神作用を与える相手の心から、当人が過去に出会った異性の顔情報を読み取ります。そして擬態の容貌をそれに近づけます。それなら攻撃しにくくなるだろう、というわけです。

精神作用をうける者たちは、それぞれがお気に入りの異性をもっています。ハーピーとしては相手の人数分の顔情報をシミュレートしなければなりません。
それで、それ用の特殊器官が発達したと思われます。原作を読了すればわかりますが、それは上部に突き立った、「鳥の頭のように思えるもの」です。
その特殊器官が、クライマックスでああなったのでそうなって、結果的に・・・。以下自粛しますが、これで整合性がとれるというものです。

ところでこの擬態は精神作用なので、カメラなどの客観的な目が介入するとモロバレです。作中の「プレゼント作戦」のとき、ハーピーがまっさきにカメラを破壊したのはそのせいではないでしょうか。

また精神作用には、距離の制約もあるでしょう。主人公の男が同僚とともに、夜明けの海でハーピーの仲間たちの愛の乱舞を目撃するシーンがあります。これは遠めにみていたので、仲間たちの精神作用は地球人に届かなかった可能性があります。それで正体がバレたでしょうか? いやいや、あのときハーピーは仲間たちから一羽だけ離れて、人間2人の直近に(精神作用をおよぼすべく?)こっそり控えていたではありませんか。主人公が背後のハーピーに気づいてギクリとするという描写もあります。ああ、設定がどんどん補強されていく。

興味深いのは、宇宙船乗員に女性がいたら、彼女にとってハーピーの顔はどのように見えたかということです。もしかしたら思い出の男性の顔? 愛の乱舞でも、オスとメスの役割が入れ替わっていたりして・・・? 乱舞を目撃した2人の乗員が男と女だったら、あの場でのあの会話は成立したでしょうか? 男性と女性で、見えるものが逆になっているわけですから。
諸星さんが乗員全員を男性にしたことで、この疑問は封じられてしまいました。まるで仕組まれたようです・・・?

というわけですので、実写映画化される方(だれ?)は、目と口も入れたハーピーと、「羽顔」のCGI合成用に顔部分をグリーンに塗りつぶしたハーピーを一体づつ作るべきです。 上の設定を演出にもりこめば、二体を違和感無く使い分けられますよ。