加工硬化の話 その8 ― 2024年06月11日
何をもって短時間加熱とするか。当初に設定した(ガスバーナーによる)加熱時間は「明るい橙色になってから」30秒。しばらくそれを続けたら、たいがいは成功しました。
定量化しようとして、正確に測るようにしてからNGが出始めました。「明るい橙色」を厳格に守ろうとすると、加熱に時間がかかる。「まだまだ、明るい橙色に達しない」とがんばってしまうから。それで深部の膨張・収縮がおこったはず。アバウトにやっていた頃のほうが、却ってよかったという。
それでも熱処理のたびにバクチはできない。定量化はしなければなりません。
ところで、マルテンサイト系ステン球の熱処理の話。3時間でやっと焼きなまる球径の球を、2時間加熱しても焼きなまりません。こんなときは1時間の追加加熱をします。最初にもどって3時間の加熱をしなくて良い。つまり、ある種の熱処理の結果は蓄積されるということです。
(シーケンシャルにやらないと成立しない、例えば焼きいれでは、こうはいかない)
この考え方をステンソケットプレートの熱処理に応用します。つまり
・たとえ短時間の加熱でも、表面はいくらかでも応力除去されている(はず)。
・表面を応力除去するが、深部は膨張・収縮させない短時間加熱を何度も繰り返せば、いつかは使える応力除去が蓄積する(はず)。
図のような工程を1セットとして、数セット繰り返す。成功しなければさらに繰り返す。
仮に3セット繰り返すとすると、ソケット1枚の所用時間は18分以上です。
つづく